日本人ノーベル賞受賞者の軌跡

スウェーデンの王おう立りつ科学アカデミーは6日、10年のノーベル化か学がく賞しょうを、有ゆう機き化か合ごう物ぶつの革かく新しん的な合ごう成せい法ほうを開発した鈴すず木き章あきら·北海道大名誉教授（80）、根ね岸ぎし英えい一いち·米パデュー大特別教授（75）、リチャード·ヘック米デラウェア大名誉教授（79）の3氏に授じゅ与よすると発表した。従じゅう来らいは不可能と考えられていた、2種類の有機化合物を、金きん属ぞくのパラジウムを触しょく媒ばいに使って結合させる「クロスカップリング反応」と呼ばれる手法をそれぞれ独自に開発し、医薬品製造やエレクトロニクス分野で、さまざまな新しい物質の合成を可能にした功こう績せきが評価された。日本出身者の受賞は08年の南部陽一郎氏（米国籍）▽小林誠氏▽益川敏英氏＝いずれも物理学賞▽下村脩氏＝化学賞＝に続く快挙で、化学賞受賞は2年ぶり。日本の受賞者数は、南部氏を含め18人（医学生理学賞1、物理学賞7、化学賞7、文学賞2、平和賞1）となった。

授じゅ賞しょう式しきは12月10日にストックホルムで開かれ、3氏には賞金1，000万スウェーデン·クローナ（約1億2，800万円）が3等とう分ぶんして贈られる。

身の回りのものの多くは、炭たん素そ原子からなる骨こっ格かくを持ち、「有機化合物」と呼ばれる。しかし炭素原子同どう士しは安定しているため結けつ合ごうしにくい。それらを自じ在ざいに結合させ、不要な副産物を抑えながら目的の物ぶっ質しつを作り出すことに、多くの化学者が努力してきた。

鈴木氏は米国留学から帰国後の79年、パラジウムを触しょく媒ばいに使い、有機ホウ素化か合ごう物ぶつから目的の有機化合物を効率的に作れることを発見した。この化学反応は「鈴木カップリング」と呼ばれている。

根岸氏とヘック氏も70年代、パラジウムなどを触媒として炭素同士を結合させる手法をそれぞれ発見。これにより、異なる2種類の有機化合物の結合が可能になった。ヘック氏による「ヘック·カップリング反応」は71年に、東工大の溝みぞ呂ろ木き勉氏（故人）も独立して同じ反応を報告しており、「溝呂木·ヘック反応」とも呼ばれる。

3氏の業績は、医薬品や化学繊維、液えき晶しょうなどの材料の人工合成を可能にした。クロスカップリング反応に代表される有機合成化学分野では多くの日本人研究者が活躍しており、「日本のお家いえ芸げい」と言われる。

（須田桃子）

単語

注釈

① 米パデュー大

美国普渡大学

② リチャード·ヘック

美国科学家理查德·赫克

③ 米デラウェア大

美国特拉华大学

④ クロスカップリング反応

钯催化交叉偶联反应

⑤ ストックホルム

（瑞典首都）斯德哥尔摩。

⑥ スウェーデン·クローナ

瑞典克朗。100瑞典克朗约合人民币100.9元。

⑦ 鈴木カップリング

铃木偶联反应，又称为“有机合成中钯催化交叉耦合”。

⑧ ヘック·カップリング反応

赫克偶联反应。

⑨ 溝呂木·ヘック反応

沟吕木·赫克反应，（Mizoroki·Heck反应），又称为“赫克反应”（Heck反应）。

思考問題

1. スウェーデンの王立科学アカデミーは、鈴木章等3人の研究成果をどう評価したか。

2. 本文においての「日本のお家芸」とは、どういう意味か。