①財やサービスを生産する集団を企業という。企業には、民間の私企業、国や自治体の公企業、民間と国や自治体が共同で経営する公私混合企業がある。
②私企業には様々な形態があるが、会社企業という形態をとることが多い。会社企業は大きく分けると、持分会社と株式会社に分けられる。持分会社はさらに、合名会社、合資会社、合同会社に分けられる。
株式会社は、大規模な経営に向いている会社である。以下の特徴がある。
①小口の株式：経営の元手となる資金（資本金）を集めやすくするために、小口の株式に分割し、小額でも出資できるようにしている。
②有限責任：株主（株式を購入し出資者となった者）の責任は、出資の範囲に限られる（有限責任）。したがって、会社が倒産しても出資額を失うだけで済み、安心して出資することができる。
③流動性：証券取引所に上場された株式は、証券会社などを通じて自由に売買できる。
★株主総会
株式会社の最高意思決定機関。会社の経営方針や取締役会（経営陣）を決める。1株1票の多数決制がとられ、大株主ほど発言権が強い。
★上場企業と非上場企業
株式会社の中には上場企業と非上場企業がある。上場企業の株式は公開株と呼ばれ、株式取引はすべて証券取引所で行われる。
▲三菱UFJ·FG株主総会
初期の株式会社や中小企業では株主と経営者は同一人物である事が多いが、現代の大企業では所有と経営の分離が進んでいる。その原因として
①ほとんどの株主は投資額が非常に少ないため、株主総会には出席せず、会社の運営方針はすべて経営者に委託されている。
②大きな株主は銀行などの金融機関である場合が多く、株主の法人化が進み、企業の経営は専門知識を持っている人に任されることが多い。
③近年は経済のグローバル化により、多国籍企業が増え、外国人の株式投資も増えている。
（1）自由競争のもとでは、力の強い企業が力の弱い企業をどんどん吸収し、やがて独占資本主義が形成されていく。
独占：特定の企業が他の競争者を排除し、生産と市場を支配している状態。
寡占：少数の大企業によって市場が支配されている状態。
（2）企業の独占や寡占へ向かう形態
①カルテル（企業連合）：同種企業が価格協定などを結んで競争を回避する。
②トラスト（企業合同）：同種企業が合併を通して、一つの大企業を作る。
③コンツェルン（企業結合）：一つの大企業持株会社が親会社となって、同種異種を問わず、あらゆる産業を資本支配しようとする。日本では財閥と呼ばれている。
戦後、日本の財閥は解体されたが、高度経済成長期は大企業間の株の持ち合いが多かった。また近年、一部の企業が他業種の会社を次々と合併·買収（M&A）し、複合企業（コングロマリット）を形成している。このような企業に対して、規制をしなければコンツェルンに発展する可能性がある。
独占の行き過ぎを防ぐため、日本では独占禁止法（1947）が制定され、行政委員会の一つである公正取引委員会がその運用を行っている。1947年以来禁止されてきた持株会社（他社の事業支配を目的とする）は1997年の独占禁止法の改正で原則解禁となった。
1. 二重構造
日本の大企業と中小企業の間には、賃金と生産性などで大きな格差がある。このような格差を大企業と中小企業間の二重構造という。このような格差が生まれる原因：
原因①下請け企業としての中小企業：大企業から注文を受け、生産工程の一部を担当。不況の時には大企業から切り捨てられる。
原因②系列企業としての中小企業：大企業の子会社として存在し、経営の自主権はない。常に弱い立場に置かれている。
原因③銀行からお金を借りるのが困難：メガバンクはリスク回避のため、中小企業に対して貸し渋りが起こり、中小企業はほとんど信用金庫、信用組合からお金を借りている。
2. 中小企業の生き残り
日本で中小企業は企業数全体の99％を占める。企業はどのような方法で生き残るのか。
方法①大企業との差別化を図る：特殊な技術を生かしたベンチャービジネスや地域の特色を生かした地場産業など、大企業ができないような事業を手がける。
方法②国家の保護：中小企業基本法や大規模小売店舗法（批判が強まり、2000年廃止）など、国家が法律で中小企業を守る。しかし、経済の自由を阻害するとの批判もある。
企業の経営者は法令遵守（コンプライアンス）を重視して経営しなければならないが、オリンパスのような粉飾決算事件[1]が後を絶たない。また、企業は社会的な責任（CSR）を認識し、文化的支援活動（メセナ）や慈善活動（フィランソロピー）を積極的に行う必要がある。
▲オリンパス株式会社
［链接答案］
1. 株式会社に関する説明として正しいものを、次の①～④の中から一つ選びなさい。
①株主は、保有株式数に関係なく、株主総会では一人一票の議決権を持っている。
②株主は会社が倒産した時には、出資額の範囲内で責任を問われるだけである。
③株式会社の最高の意思決定機関は取締役会であり、株主は取締役の選任に異議を申したてることはできない。
④取締役の判断の誤りによって会社に損害が生じた場合は、警察が株主に代わって強制捜査を行う。
（「2007年度日本留学試験（第1回）試験問題[EJU]」）
2. 次の文章中の空欄A～Cに当てはまる語の組み合わせとして最も適当なものを、下の①～④の中から一つ選びなさい。
今日、最も代表的な企業形態は株式会社である。資金を広く集めるために、A額面の株式を発行して、全体としてB額の資金を集める事が出来る。会社の最終決定権はCになる。
（「2006年度日本留学試験（第1回）試験問題[EJU]」）
13. 現代日本における株式会社について述べたものとして誤っているものを、次の①～④の中から一つ選びなさい。
①株式会社では、会社が倒産しても、株主は自己の出資分までしか法的責任を負わない。
②第二次世界大戦後に財閥が解体され、株式の持ち合いや役員の派遣、融資などによって結び合う企業集団が形成された。
③独占禁止法の改正によって、他の会社の事業活動支配のために、総資産の50％以上を株式保有に当てる持ち株会社は禁止された。
④大企業では所有と経営の分離が進み、経営は専門の経営者によって行われるようになった。
（「2008年度日本留学試験（第2回）試験問題[EJU]」）
[1]オリンパス株式会社が巨額の損失を10年以上の長期にわたって隠し続けた末に、これを不正な粉飾会計で処理した事件。
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